東京都庁と特別区はどう違うの?
どうやって選べばいいの?
今回は、こんな疑問にお答えします。
本記事の内容
- 都庁と特別区の採用試験比較
- 都庁と特別区を選ぶうえで大事なポイント
- 都庁と特別区の職員採用試験の倍率比較(直近12年)
- 都庁を選ぶメリット3つ
この記事を書く私は都庁職員歴7年で、民間企業で働きながら、都庁への転職を経験しました。
都庁と特別区、両方の採用試験を受験したので、自分の経験も踏まえて解説します。
結論から言うと、行きたい特定の区がないなら、都庁がおすすめです。
記事を読み終えると、都庁と特別区のどちらの公務員試験を受けるべきかが分かります。
都庁か特別区どちらを受けるか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください!
都庁と特別区の比較
都庁I類Bと特別区I類は、試験日が同じのため、併願はできません。ただ、都庁のI類Aは試験日が違うため、特別区のI類と併願可能です。
都庁と特別区では、採用試験や勤務条件でどのような違いがあるか解説します。
採用試験
採用試験の内容は、ほとんど同じですが、大きく違うのは、専門試験です。択一式か記述式かで分かれるからです。
具体的には、以下表1のとおりです。
科目 | 特別区I類 | 都庁I類B |
---|---|---|
教養試験 | 48 題中 40 題解答①知能分野(28 題必須)②知識分野(20 題中12 題選択) | 40 題必須解答①知能分野(24題)②知識分野(16題) |
専門試験 | 五肢択一式(55 題中 40 題選択解答) 出題分野(11 分野・各 5 題) | 記述式(10 題中 3 題選択解答) |
論文試験 | 課題式(2 題中 1 題選択解答) | 課題式(1 題必須解答) |
口述試験 | 個別面接 | 個別面接 |
特別区の専門試験は11分野から8分野を選択、都庁の専門試験は10分野から3分野を選択します。
そのため、特別区の方が、対策する範囲が広いです。一方、都庁の方は記述式なので、1分野におけるより深い知識が必要になります。
つまり、特別区は広く薄く、都庁は狭く深く勉強するイメージです。
(参考資料)
初任給と勤務条件
初任給は、都庁も特別区も変わりません。勤務条件もほとんど同じです。
具体的には、以下のとおりです。職務経験等がある人は、一定の基準により初任給が加算されます。
特別区:約 220,400 円
都庁I類B:約 220,400 円(都庁I類A:約 240,200 円)
勤務時間は、1週間38時間45分、1日7時間45分
有給休暇は1年間に20日、夏季休暇は5日
(参考資料)
都庁と特別区を選ぶうえで大事なポイント
結論から言うと、自分の興味があること、やりたい仕事があるかどうかです。
試験に合格して入庁すると、長い間働くことになるので、興味がない仕事を続けるのはつらいし、モチベーションも上がらないからです。
都庁と特別区の仕事で大きく違うのは、住民と近い距離で仕事をするのか、スケールの大きい仕事をするのかです。
ただ、実際はどちらも窓口業務がありますし、業務内容の多くは、行政計画の策定や庁内外の調整、議会対応などであり、大きくは変わりません。
やりたい仕事や興味があることは、面接試験で聞かれる可能性が高いので、自分の中で言語化しておくことが必要です。
とはいえ、やりたい仕事があっても、希望どおりの部署に異動できる可能性は低いのでは?
確かに、必ずしも希望どおりの部署に配属されるわけではないので、やりたい仕事にこだわりすぎるのもよくないです。
実際、希望どおりの部署に行ったけど、思っていたのと違うことや、逆に全然希望していない部署だったけど、意外とやりがいがあって楽しいこともあります。
ただ、業務の対象範囲が都内か区内かで、今後の仕事が大きく変わってくるので、その点は考慮して受験先を決める必要があります。
なので、自分の興味があること、やりたい仕事があるかで選ぶことが重要です。
ちなみに私は、やりたいことが特別区ではなく都庁にあったので、最終的に都庁を選びました。業務範囲が広く異動の選択肢も広がるため、いろんなことにチャレンジしたいなら、都庁がおすすめです。
都庁を選ぶメリット3選
次に、都庁を選ぶメリットを3つ紹介します。
①倍率が低い
1点目は、特別区に比べて倍率が低い傾向にあるので、試験に合格しやすいことです。
特別区I類と都庁I類の事務職における採用試験倍率の年次推移は、以下表2と図1のとおりです。
年度 | 特別区I類 | 都庁I類B(一般方式) | 都庁I類B(新方式) | 都庁I類A |
---|---|---|---|---|
令和3年度 | 4.8 | 13.7 | 14.3 | 15.4 |
令和2年度 | 4.7 | 4.6 | 4.3 | 8.1 |
令和元年度 | 5.7 | 5.6 | 6.6 | 8.7 |
平成30年度 | 5.4 | 6.1 | 7.3 | 8.1 |
平成29年度 | 5.8 | 6.3 | 7.9 | 7.9 |
平成28年度 | 6.6 | 4.9 | 6.7 | 9.2 |
平成27年度 | 5.6 | 5.4 | 11.1 | 12.1 |
平成26年度 | 7.7 | 6.7 | 18.0 | 17.6 |
平成25年度 | 8.4 | 7.5 | 17.5 | 20.0 |
平成24年度 | 8.4 | 6.6 | – | 19.1 |
平成23年度 | 8.1 | 6.5 | – | 17.2 |
平成22年度 | 8.4 | 6.2 | – | 25.5 |
図1
特別区の方が都庁(I類B一般方式)に比べて倍率が高い傾向にあります。
過去12年の試験倍率結果は、特別区が都庁に比べて9回高いです。(令和3年度の倍率は、都庁の採用予定者が極端に少なかったので、異常値として見るべき)
倍率の傾向は、今後も同じように推移していくと考えられるので、倍率が低い都庁の方が合格できる可能性が高いと言えます。
②専門試験科目の範囲が狭い
2点目は専門試験科目の範囲が特別区に比べて狭いので、対策がしやすいことです。
専門試験の出題形式は、特別区が択一式、都庁が記述式になります。
記述式の方が難しい印象があるかもしれませんが、その分準備する科目が少なくてすみます。逆に、択一式は科目が多く勉強する範囲が広いです。
専門試験の結果は、合否に直結するので、対策しやすく点数が取れる方を選ぶことが重要です。
専門試験内容や対策しやすさで、受験先を選んでも大丈夫なの?
確かに、専門試験を通過しても、その先の面接試験で落ちる可能性はあります。
ただ、1次試験に受からないと面接にも進めないので、1次試験に合格できそうな方を選ぶことも大事なポイントです。面接試験対策は、1次試験合格後でもOKです。
なので、なるべく専門試験にかける時間を少なくするなら、都庁の方がよいです。
ちなみに、私は最初に特別区を受験したものの、専門試験の範囲が広く対策が不十分で、1次試験不合格となり面接にも進めませんでした。翌年は、専門試験範囲がより狭い都庁を受験して、合格しました。
③異動の選択肢が多い
3点目は、異動の選択肢が多いことです。都庁は特別区に比べて、組織が大きく業務の範囲も広いです。
都庁は2〜4年、特別区は3〜5年で異動がありますが、異動部署の選択肢は都庁の方が多いです。異動の度に、全く違う分野へ行くことも可能です。
でも、都庁の場合、多摩部や島しょ部などへの転勤もあるのでは?
確かに、都庁の勤務先範囲は都内全域のため、23区だけでなく、多摩部や島しょ部への異動もあります。
ただ、住んでいる場所を考慮して配属が決定されるので、そこまで心配する必要はないです。島しょへの異動も希望しないかぎり、基本的にはありません。
なので、異動の選択肢を広げるなら、都庁がおすすめです。
まとめ:悩んだら最後は直感で選ぶ
今回は、都庁と特別区の選び方について解説しました。
本記事の要約
- 都庁と特別区は、初任給や勤務条件は変わらない
- 都庁と特別区の倍率は、都庁の方が低い傾向にある(過去12年の結果は9対3)
- 都庁と特別区を選ぶポイントは、やりたい仕事があること(なんとなくでもいい)
- 特別区で行きたい特定の区がないなら、都庁がおすすめ
都庁も特別区も勤務条件はほぼ同じであり、基本的にワークライフバランスは実現しやすい環境にあります。
入ってみないとわからないことも多いので、あとは入ってみてから考えるものもアリです。悩んだら最後は直感で選びましょう。
今回は以上となります。ありがとうございました。